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マツダくんたちの思い出②

 智裕の本棚が目に入り直倫は立ち上がった。  その本棚はあまりちゃんと整理されていなかったが、漫画本とは別に野球の専門書や雑誌がいくつもあり、その全部がボロボロになっていた。  雑誌を1冊手に取ると、折り目がついていたページを開く。そこにはマーカーなどで様々な書き込みがされていた。  それらのページはどれも身体の作り方か投球フォームだけ。 (他校の情報なんか入るはずないな……配球やトレーニングをこれだけ頭に叩き込んで……それで1ヶ月で完璧に体を仕上げて…松田先輩って……。)  バサッ  直倫が雑誌を戻そうとしたら別の本が本棚から落ちた。音に気付いた野村と智裕もそれを見てしまった。 「あ。」 「……これ、琉璃ちゃんが持ってるような漫画?」 「ち、ち、ちが!こ、これは!決して!ゆ、優里!そう!優里から読めって言われて!」 「でもこの表紙のキャラクター、心なしか石蕗先生に似てませんか?」  直倫はパラパラとページをめくった。  さきほど、拓海に似ていると指摘したキャラクターが縛られて目隠しされて大人の玩具で弄ばれて喘いでいるシーンを見つけてしまった。 「……あーあ。」 「松田くん、こんなことしたいの?」 「ちちちち違う!だからそれは優里に押し付けられたんだって!それに俺は緊縛する趣味はねぇ!されたいけど!」 「宮西くんじゃないから俺は何も言わないよ?」 (やっぱマウンドに立つ松田先輩は別の人格なのかもしれない。)

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