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オオタケくん再争奪戦⑦

「ふざけんじゃねーよ……。」  ドスの効いた声の主は直倫だった。  驚いた2年5組はその声の方を見ると、とんでもなく禍々しいオーラ全開で一歩引いた。そして敬語を使わない直倫を見るのは智裕以外は初めてだった。 「の、の、野村ぁ…怖ぇよあれ。」  馬橋の寮で怒鳴られたことのある智裕でさえ恐怖に(おのの)き野村にしがみついた。さすがの野村も顔が青くなっている。 「あれガチギレしてるよな、赤松。」 「椋丞、何でそんなに楽しそうなの?」  加治屋と直倫の間にバチバチと雷が見える気がした。加治屋の笑顔と直倫の真顔が一層恐怖を駆り立てる。  こうなった原因である裕也も怯えるしかなかった。 「ゆーくんに相応しいのは僕だから、君には手を引いてもらいたいな。」 「はぁ?寝言は寝てから言ってもらえませんか?」 「そちらこそ、恋愛なんかに時間を割いてる余裕があるのかな?堀くんの抜けた穴は大きいんじゃないの?」 「チッ!」  ガンッ  直倫は近くにあった机(智裕の席)を強く拳で叩いた。そしてそのまま教室を出て行った。

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