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オオタケくん再争奪戦(12)
しっくりこない台詞を言われると、裕也が接近してきて直倫と額をコツっとあわせた。
「指、今朝予約したろーが。」
「……はい。」
「信じろ、俺を。」
「すいません……でした……。」
直倫が裕也の手を取ると、右手にヌルッとした感触があった。
「裕也さん…血……なんで…。」
「あ?あー、さっき扉殴ったから?こんなの擦 り傷だっつの。」
「ごめんなさい……」
直倫は両手で裕也の手を包むと、患部から少し外れた場所にキスをした。
「つーか手はお前の方だろ!トモの机破壊されたぞ⁉︎大事な時期なんだからこんなことで怪我したら清田に怒られんじゃねーか。」
「あー…俺は平気です。」
「は?嘘だろ⁉︎」
裕也は握られた手を振りほどいて直倫の手を観察する。腫れどころか傷一つなかった。
あんな風に殴ったら普通なら怪我をしていておかしくないのだが。
「え、何で⁉︎何で無傷⁉︎」
「精神統一の一環で兄と空手を少々…。」
「は……ひ…?」
「あと柔道も体幹やスタミナ強化で兄と一緒に黒帯を取りました。」
裕也が赤松ブラザーズを敵に回すまいと心で誓ったタイミングで昼休みの終わるチャイムが鳴った。
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