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2年5組男子カラオケ大会①
日曜日の午後、2年5組の男子はクラス1のチャラ男・若月 によって駅前のカラオケボックスに召集された。
部屋に入るなり、若月はマイクの電源を入れて喋り始めた。
「いやいや諸君、今日はお集まりいただきあざーす!」
「なんだよ急に。」
「部活組もチョッパヤでご苦労様でぇす☆」
野球部を始めとする運動部は新人戦を控えており、午前中の厳しい練習のあと超特急で帰宅して着替えてやってきているので疲労の色が尋常じゃない。
「実はー、来たる文化祭なんですけどねー、俺またバンドやるんだよね。」
「おー、今年もやるのか。」
若月は昨年も男子たちとバンドを結成して演奏を披露していた。因みに若月はベース担当である。
「やるんだけどねー、ボーカルを探してんのよ。去年ボーカルやったのって3年生だから今年は不在なわけよ。」
「いや、逆にボーカルがいねぇのかよ。」
「まぁまぁ。てなわけで俺を助けてちょーだい!お願い、お願い、おねがーい!」
若月は頭上で手を合わせて懸命に頼む。しかしその場にいる全員が顔を見合わせながら困惑する。
その空気を察した若月は手馴れたようにリモコンタブレットを操作し、曲を入れた。
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