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エガワくんの吐露②

 一起の斜め後ろの席に座っている若月に智裕が訊ねると、若月は立ち上がって一起の席までやったきた。  そして智裕が持ってるスマホを手に取り「あー」と声を上げる。 「oasisって超有名だっつーの!スタジアムとか普通にライブしてっし、この曲もすげー有名だし。つーかほっしゃん上手すぎてビビったし!」 「英語凄かったよなー。何言ってんのかわかんねーけど。」 「この曲は作曲者のノエル・ギャラガーが彼女の為に作ったラブソングだからな。ほっしゃんも高校時代に彼女に歌ったんじゃね?」 「うへぇ…隅に置けねーなガチムチなのに。」  若月と智裕がニヤニヤと話しているそばで一起はますます俯いた。  そして書き取った英文を指でなぞった。  ――you’er my wonder wall (wonderは奇跡って意味のはず……じゃあ…その奇跡って…。) 「あ、委員長、ここは分けねーんだよ。ワンダーウォールって1つの名詞だから。」  若月は「wonder wall」と書かれたところを指でなぞって指摘した。 「多分これは造語なんだよなぁ。色んな解釈があるんだけど直訳したら“不思議な壁”とかダセェじゃん?ラブソングだから、“君は俺を守ってくれる存在”とかそんな感じ。」 「やべぇ、若月が賢く見える!バカなのにチャラいのに!」 「お前よりは英語の成績いいからな!はーはっはっは!」  こんなアホなやり取りをしていたら、いつもなら一起から「どんぐりの背比べだ」とかツッコミを入れられるのだが、今日はそれがなかったので智裕は不自然に感じた。 (もしかして……ほっしゃんと何かあった?そういや夏休み江川っちずっとバイトしてたし……。) 「江川っち、昼休みちょっと付き合え。」

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