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野球部閑話【次の馬橋学院】④
――八良は時間が止まったような感覚に襲われた。
正面を向いてキャッチャーマスクを被る畠から放たれる覇気が尋常ではなかった。
(なんやねんあれ……さっきのオドオドしとったん、演技か?)
「始めは真ん中低めにストレート5球、お願いします。」
「……おう。」
セットポジション、投げる方向を見据える。ミットがしっかり構えられていて、そこに目がけてオーバースローでストレートを放つ。
パアァァンッ
しっかりと捕れた音がした。そしてキャッチング技術が見事だった。
八良は迷いなくそこに投げることが出来た。
(なんや…なんか、投げやすっ!他の奴はリリースの直前にミットが閉じられてしもーて、その一瞬に狂わされることがあるのに、コイツのキャッチは球がミットに吸い込まれるよう…。)
「今の球、縫い目にしっかり指が掛かっとらんから浮いてもぉてます。しっかり握って、次はインローで。」
「は…?」
呆気にとられた。ウジウジしていたものと同じ声ではっきりと明確に指摘された。
(何やの…こいつ……。)
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