852 / 1000
野球部閑話【次の馬橋学院】⑤
ブルペンでの投球練習を終えた八良はすぐに監督に駆け寄った。
「監督!なんやあの1年!俺めっちゃ球速よなったんやけど!」
「良かったやん。」
「あいつマスク被るまでオドオドしとったやんか!何者なんあいつ!」
「畠晃、この前のレギュラー試験、捕手では断トツやったんや。山根と争わせるつもりやが、背番号2はほぼほぼ畠で決まりや。」
「………は?」
「畠は天才や。チームに慣れたら主将 、ゆくゆくは日本を代表する高校生捕手、そしてドラフト1位になる可能性もあるで。見てみ。」
監督に促されて八良はグラウンドを見た。キャッチャーの盗塁阻止のスローイング練習が行われていた。
畠のスローイングは他を寄せ付けない程に完璧で八良は圧倒された。
「あれと、“東の松田”っちゅーバッテリーも見てみたいもんやな。天才同士、世界獲れるんちゃうか?」
「…監督、それはアカン……。」
八良は監督の放った言葉に拳を握った。
そして畠を見ながら八良はニヤリと笑った。
「天才は俺や。アイツと組むピッチャーは俺や。」
声では強気だったが、心は穏やかではなかった。
(あかん、俺はアイツの技術に相応しいピッチャーにならな!)
――
ともだちにシェアしよう!