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マツダくんとユイさんの距離⑥
最終日の練習も終了した。陽も沈みかける午後7時前に解散となった。
監督やコーチから鼓舞される選手たちは解散後も少しだけピリつく空気となった。
中川はいつも連 む4人の空気に入れずにいた。
隣に並んでいた同じ内野手で同じ大阪の強豪「龍新 学園」の石山 にコソッと話す。
「なぁ石ちゃん…なんかあの辺、近付けへんのやけど。」
「あー…シュンちゃんって宿舎の部屋誰と一緒なんやっけ?」
「後藤……あかん怖すぎるんやけど。石ちゃんって誰と一緒なんやっけ?」
「俺は大東 と一緒や。」
大東とは北海道の強豪「五稜 大学付属高校」から招集された今回の5番打者だ。
体格は中川よりもしっかり出来上がっていて中川に匹敵する長打力もあり、ドラフトも上位指名が期待されてる。
「石山、俺がどうかした?」
突然後ろから声をかけられて中川と石山は「うおっ!」と声を上げた。噂をすれば声をかけてきたのは大東だった。
「大東、アレ…あの4人見てみ。」
石山が顎でクイっと指し、大東はその方向を見た。大男でさえ怯える禍々しい雰囲気がそこにはあった。
「こわっ!」
「な?シュンちゃんがあん中行かなアカンの、ちょっと可哀想やろ?」
「……中川、今日は俺らの部屋でもいいぞ。ただし、ベッドはお前と石山で使え。」
「はぁ⁉︎」
「俺とお前でもいいが、この体型じゃセミダブル2人は狭いだろ。」
「つか何で俺が男とひとつのベッドで寝なあかんの!何でそんな選択肢を出すん⁉︎」
大東も、中川に匹敵するほどの馬鹿だった。石山は苦笑いで2人のやり取りを見守った。
(これが4番と5番やもんなぁ……プロ入ったら苦労するでぇ…。)
因みに石山はセカンド、プロ志望届は出さずに、社会人野球で力と社会常識を身につける進路を選択していた。
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