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マツダくんとユイさんの距離⑦
後藤と八良、晃と智裕、両者の静かな火花が散っている。その様子を横目で見てほくそ笑むのは監督とコーチだけだった。
「由比、宮寺 、アレは面白いことになるで。」
関本監督は投手コーチの由比とバッテリーコーチの宮寺にそう言うと、2人も笑って返した。
「関本さんがあんなこと言うからですよ…壮行試合を準決勝、決勝とか。」
「そら、ああでも言わんと…なぁ。」
選手たちからだいぶ距離をとって、3人は小さな声で話す。
「宮寺、後藤と畠、正直どうなん?」
あまりにもストレートな質問だったが、宮寺はトレードマークのもみあげを掻きながら迷いなく返答する。
「今んとこは圧倒的に後藤が正捕手です。畠も潜在能力っていうんですか?まだ100%出しきれてないです。今回化けないようであれば控えですね。技術は後藤と遜色ないですけど、中心におる雰囲気とか技術でカバー出来ない要素というのは、まだまだです。」
「そうか…由比、松田2人はどや?」
由比は愉快そうに小さく「ふふ」と笑い、持っていたタブレットを操作しながら質問を返す。
「右と左、豪腕と技巧、全くタイプも違いますし、当たった相手次第かと。アメリカ相手なら、2人のリレーっていうのも面白いと思いますけど、2人とも先発型ですからね。夏の時点ではマウンド度胸など精神面の部分では圧倒的に八良くんが上手 でしたが、今の智裕くんはそれを超える可能性も見えてきましたね。」
「そうか……由比、お前は松田智裕に個人的に色々教えとるみたいやな。」
「ええ、彼は充分な指導者がいないというハンデがありましたので、僕も自宅は横浜で仕事も都内でしたし…少し気になって覗きには行きました。」
「ま、勝てればええけど……気を付けぇよ……お前の名前検索したら、次に松田智裕の名前が出るようになってしまってるで。お呼びでない記者も狙っとる…。」
「……そんなこと、ないですから。」
何か含みを持たせたように関本に忠告されると、由比は飄々 と応対した。由比の心は、微笑んでいる。
(……智裕くんと僕が、ねぇ……ま、関本さんには隠せるとは思えなかったけど。)
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