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マツダくんとユイさんの距離⑨
やっと神宮の敷地を抜けようかとし、遠征組の選手は宿舎に向かうバスに乗り込む。
智裕も近くの駅では追いかけられる危険があった為、関係者の駐車場に待機していた。
この強化練習が始まってから、智裕を送ってくれる車は決まっている。左ハンドルの高級スポーツカー、由比の愛車だ。
「智裕くん、お待たせ。」
「いえ、今日も、お願い、します。」
初日に地下鉄に乗ろうとしたが智裕の知名度では自宅を追跡される恐れがあるとのことでスタッフが送り届けることになったのだが、智裕の家が通り道だからと由比が送ってくれることになった。
最初は戸惑いもしたが、必殺の「ゆいすけスマイル」を出されると断れなくなってしまった。
しかし智裕にとってこの2日間は夢のようだった。
少々混んでいる道を進みながら憧れの人と他愛のない話が出来た。
野球のことだけでなく、学校での出来事、由比の青春時代、それぞれの家族のことなど。雑誌やテレビのインタビューでは知り得なかった憧れの由比壮亮を知ることが出来て智裕は胸をときめかせていた。
「今日は随分とピリついてたね。」
「え……えっと……はい……すいません。和を乱さないようにとは心がけていたんですが…。」
由比が指摘したのは、八良と自分の間にあった対抗心のことだとすぐに分かった智裕は謝る。
だが由比は咎めることはなかった。
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