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立ちはだかる壁④
「何があった。言ってみろ。」
「やだよ。」
「あ?別にテメェの為じゃねーよ。そのテンションを秋季大会まで引き摺られんのが迷惑なだけだ。」
冷たい声で言い放たれて智裕の心は大きな刃物が刺さったように痛くなった。
いつのまにか恭介にじっと少しだけ睨まれた智裕は己のプライバシーのなさを痛感した。
「由比、コーチに……なんか、好きって言われた……そんで昨日は、大竹に話聞いてもらったんだけどさ……全面的に俺が悪いとか、クソたらしとか散々言われてさ………俺は野球人として由比壮亮投手が大好きで、俺にはちゃんと大切な人がいるんだよ。」
「で、石蕗 に後ろめたくなってウジウジしてんだ。」
「そう、ツワブ……ってえええええええええええ⁉︎」
智裕は今日一番の驚きで飛び上がった。
周りの視線が一気に集まったので申し訳なさそうにペコペコしながら背中を丸めていそいそと着席する。
「おい!どういうことだ!な、なんでお前が知ってんだよ!」
「俺らの情報網ナメんなよ。お前が入部してあんなに記者が集まり出した時に色んなツテで身辺調査はしてたんだよ。」
そう言って恭介はいじってたスマホの画面を智裕に見せた。それは入部前の智裕が拓海と公園のブランコの前にある柵に腰をかけて智裕が拓海の肩を抱いている、明らかに恋人ですというようなツーショットだった。
「……うそ……だろぉ………。」
「俺だけじゃなくて、監督も知ってるからな。」
智裕は開いた口がもっと開いて塞がらなくなっている。
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