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立ちはだかる壁⑤

お前に害が及ぶならと、俺も監督も石蕗に忠告はした。だけどお前が途端に調子狂わせやがったからどうしようかと思ってたら勝手に復縁してっし、絶好調だし、俺も監督もお前らの交際は黙認することにしたんだよ。感謝しろ。」 「ま、マジかよ……もう…ちょっと、え……えっと……俺、どうすりゃいいんだよ……。」  大混乱で智裕は頭を抱えるしか出来ない。そしてぐるぐるとした思考の中で言葉を選ぶ。 「き、清田……俺、こんなんで、明日……なげ、投げん、だけどぉ……。」 「そうだなぁ。明日の相手の先発は、中条(ちゅうじょう)大学4年のエースで今年のドラフト上位指名候補の布田川(ふたがわ)(イサミ)だっけ?今日の相手の数倍強ぇぞ。」 「お前は鬼か……どうして追い詰めるようなことしか言わねーんだよぉ。」  半べそをかくような声で訴えると、恭介から頭を痛いほど掴まれる。 「鬼で結構。だが、明日は経験値が圧倒的にあるお前に晃を引っ張ってもらわねーと負けは確実だ。」 「…………俺もそれはわかってんだよ。だけどこの気持ちとか、どうすりゃいいんだよ。」 「今日のうちに由比壮亮をしっかりフッて石蕗に土下座でもすりゃいいんじゃね?」 「お前は本当にさ、傷口に塩どころかハバネロを塗ってくるよな。」 「そりゃどーも。」  恭介が呆れながら答えると、再び球場が騒がしくなった。

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