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立ちはだかる壁⑨

――  昨日の午後10時、恭介のスマホが断続的に振動した。画面には「畠 晃」の文字。通話だったので応答すると、スピーカーからすすり泣く声が聞こえる。 『キョ、スケぇ……うぅ……ぐすっ。』 「何?どうした、明日試合だろ。」 『うぅ…ごわ゛い゛よお゛ぉぉぉ…!』  どうやら恭介の声を聞いて安心したらしく、電話の向こうの晃は子供のようにビービーと遠慮なく泣き出した。 「おい、お前もう消灯時間とかじゃねーのかよ。」 『あ、あど…いちじ、かん…やからぁ……キョースケぇ…うぅ、ゔぅー……っ。』 「何があった?ゆっくりでいいから話せ。」  恭介が出来る限りに優しく諭すと、落ち着きを戻した晃は順々に話を始めた。 『あん、なぁ…明後日が、俺と松田やろ……?それが…俺は……やっぱ冷静にプレッシャーなって…それ、ハチローさ、ん…嫌いやぁって…めっちゃ睨まれてん…。』 「……いやそれだけ?」 『あんな、睨まれたん…初めてで……俺、ずっと、女房やったんに…つらいし、怖いし……松田も帰宅組でおらんし…俺、誰頼ったらええの?』  晃の泣く理由を恭介は冷静にまとめると、人見知りの晃は八良や中川の仲介でなんとかチームに馴染んでいたが、その八良に敵意を向けられてしまい、それについて慰めてくれたり自分を理解してくれる唯一の相棒である智裕はいないので縋れる人がいないから、ということだった。 「晃……それが上に行くことじゃないのか?馬橋も一緒だろ、レギュラー争いとか厳しい中でお前は生き残って主将にまでなったんじゃないのか?」 『せや、けど……ハチローさん、は、ずっと味方で…いきなし、怖くなってもーて……俺どないしたら…ええの?』 「ハチロー、ハチロー、うるせぇよ。」

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