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立ちはだかる壁(12)

 9番打者で相手チームが3アウトを取って攻守交代、球場からは多くの賞賛の拍手が後藤に送られる。  その雰囲気というものは智裕の刺激になってしまった。 「俺、やれんのかよ……明日……。」  マウンドに上がった八良は怖いくらいにいつもの八良だった。  援護を貰い余裕すらを出して、だがそれが八良の強みでもある。気持ちが伸び伸びとした投球は更にギアを上げる。 (楽しそうに、獲物を仕留めるように……あの人は、自分の球を信頼して自信に満ちあふれている。俺は、俺は……!)  智裕はまた震え出した左手を見つめる。  _智裕くんは、世界で一番、強くてかっこいいよ。  こんな時に浮かぶのは拓海の顔。それに少し罪悪感もある。だけど嬉しかった。 (拓海さん……ありがとう……そんで、ごめんね……あともう少しだけ、頑張らせて。)

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