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超えていくべき壁①

 八良は球数制限で6回1/3で降板し、試合は1-4でU-18日本代表の快勝で終了した。  勝利投手と先制ホームランを打った女房とのバッテリーがプロさながらのお立ち台に立ってヒーローインタビューを受けた。 『松田投手、6回まで無失点、完璧なピッチングでしたが、ご自身では如何でしたか?』 『はい、一緒にバッテリー組んだ後藤くんが完璧なリードをしてくれたので僕はそれを信じて後藤くんの要求する場所に要求通りの球を投げただけです。』 『代名詞になってますパワーカーブも力強く、変化球にも球速と球威が増したようにも見えましたが、何か練習をされたんですか?』 『由比コーチのご指導がとても的確で自分の修正すべき点を直すことが出来た結果かもしれません。』 『明日は夏の甲子園で共にバッテリーを組んだ畠選手、そしてライバルでもあるサウスポーの松田投手、松田八良投手にとっては可愛い後輩2人が先発しますが何か言葉はありますか?』 『えー…明日の相手チームも強い人たちだらけなので今日の勢いをそのまま継いで、勝ってください、と言いたいです。』  インタビューを終えて脱帽し一礼すると、女性ファンの声が多く八良に送られる。  そして次に上がったのは後藤、その顔は安堵した仏様だった。 『投手陣を見事にリードし、更に2回には先制の3ランを放ちました後藤礼央選手です。ナイスリード、ナイスバッティングでした。』 『ありがとうございます!』 『夏の甲子園でもキャプテンとしてチームを準優勝に導き、そして今回の日本代表チームも扇の要として日本トップレベルの高校生選手たちを率いて今日こうして勝利を掴みました。今の率直なお気持ちは?』 『そうですね、甲子園は今日一緒に組んだ松田くんに一歩及ばずだったので、その悔しさを糧にして世界選手権に向けての練習をしてきました。今日初めてのこうした大きな試合で勝てたというのはとても報われたような気がします。』 『そしてあの先制ホームラン、相手はインコース低めのストレート、打った時の感触は如何でしたか?』 『はい、中川くんと大東くんがヒット打って出塁してくれたおかげでなんとなく相手の配球が読めた気がして、そしたら真芯に当たってくれたので…はい。』 『あのホームランが今日1番の歓声でした。球場のファンに一言お願いします。』 『応援していただきありがとうございます。皆さんの声が力になりました。明日も引き続き応援をお願いします!』  そのままお立ち台で写真撮影に応じる2人の姿は、智裕の目に、晃の目に強烈に焼きついた。そして恭介の目にもそれは映っている。 「松田、明日お前もあそこに立てるといいな。」 「まぁ、な…。」 「お前は立てるだろうな…きっと。」 (じゃあ隣にいるのは…晃か?)

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