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マツダトモヒロという存在④

 郁海を連れ立ってスタンドに戻ると、2年5組は大騒ぎだった。特に女子は凄まじかった。 「きゃあああ!石蕗家素晴らしいDNA!」 「イケメン!イケメンだわ!」 「え、ツワブキちゃんの兄⁉︎イケメンすぎじゃね⁉︎」 「あれで30代とか詐欺かよ!」  そして当の郁海は無表情に茉莉を抱っこしていた。 「まーちゃーん、郁海おじちゃんでちゅよー。」 「いー!すきー!」 「おじちゃんもまーちゃんしゅきでちゅよー。」  叔父と姪の微笑ましいやりとりなのだが、郁海はずっと無表情なので少しだけホラーだった。 「ツワブキちゃん……あの、お兄さんって子供好きなの?嫌いなの?」  あまりに怖くて裕也は拓海にコソッと耳打ちして尋ねた。拓海は困ったように笑って答える。 「あ、兄はあれでもすごく愛想良いんだよ。まーちゃんのことも大好きだよ、兄の子供たち2人とも男の子でもう小学生だから、女の子が可愛くて仕方ないみたい。」 「そうなんだ……へー…。」 「俺だけ母親似だから全然似てないんだよね。」  わいわいしている内に場内アナウンスの音量が大きくなった。  球場DJの盛り上がる言葉で球場のボルテージも上がっていく。

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