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マツダトモヒロという存在⑧

 スタンドから智裕たちの出陣を見守っていた拓海だが、心の中は穏やかでいられなかった。  今にも泣き出しそうなくらいの嫉妬に駆られている。 「由比コーチと松田の蜜月ゆーのも、案外ホンマのことかもしれへんな。」 「……え?」  郁海がボソリと呟いたその言葉を拓海は疑った。 「松田智裕の投球スタイルはまんま由比壮亮で、まるで自分の分身に見えるんはわかるけど、のスキンシップするかって思うわ。」 「………にぃちゃん…何、()うてんの?」 「ヤラシイ意味やないけど、松田智裕は間違いなくプロに近づいとる。もう違う世界の人間になっていきよる…わかるやろ?」 「……にぃちゃん、やめて……頼むから…。」  拓海が耳を塞いだが、主審の「プレイボール」の合図が出されて、大学日本代表側の応援が一気に加熱した。   「拓海、ちゃんと前見とき。あれが松田智裕や。」 「……にぃちゃん……。」 (見ないと…智裕くんを……見ないと……。)  拓海が意を決して顔を上げると、すぐ近くのグラウンドはまるで別次元の場所のようだった。

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