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マツダトモヒロという存在⑩

 3人目の打者を迎えた。  晃は横目で打者を見ながら考える。 (3番…大沢(おおさわ)、右打者やし……ここは外、外で意識させて、変化球で……松田が1番遅いのはチェンジアップか。なら……。)  しかし3番はクリーンナップ、普段のチームでは4番を打っている選手で、彼もまた今年のドラフト上位候補でもある。  そんな強者のオーラを智裕も18m先からでも感じていたから、晃の外角引くめのチェンジアップの要求に首を振った。 (は?何で?……ここで真っ直ぐ?)  晃は少しだけ焦るが、すぐにストレートを外角で要求した。  しかしそれにも首を振った。晃は一度目を閉じて落ち着く。 (松田は八良さんほどストレートが速くない……はず……150km/hを超えることなんか…いや、待てや……まさか!)  試しに晃が内角のストレートのサインを出すと、智裕は頷きセットポジションに入る。  晃がミットを内角の低めに構えると、智裕は長い脚をあげて、肩が柔らかく後ろに反れて、そして白球が。  ズドンッ  鋭い、ではない。  重たい感触が晃の全身を痺れさせる。  そしてコントロールは正確無比に改善されているからこんな際どいコースでも球審はストライク判定だった。

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