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マツダトモヒロという存在(12)

(つ、次や……切り替えていかな…まだ1回やで……。)  晃が自信消沈し始めた矢先に対戦するのは4番打者。  ベンチから宮寺バッテリーコーチは一層と目を光らせて晃を見た。  顔を上げた晃は智裕を見据える。 (あ……。)  晃は恭介の言葉がふと頭を過ぎった。 _俺は自分のチームのエースに負けた……マウンドを見つめるのが怖かった。 _一瞬の揺らぎが、松田を不安にさせたのかもしれねーって……。  恭介が晃たちに負けた夜に零した弱音。それは晃に送られたゲキだったのかもしれない。  だが晃は智裕のオーラに圧倒されてしまう。 (なんで……甲子園の時と、比べもんにならん。え、2アウト取れたよな…一度も首振られんと…どうやって打ち取った?どうやって松田を納得させた?俺、どうやってリードしとった?) 「ふぅ……。」  呼吸をおいて、晃は目を開けた。  そこから数十秒、晃は何も覚えていなかったが、気がついたら出塁してた大沢の盗塁を刺して3アウト目を取っていた。ベースカバーに入っていたセカンドの石山もただ驚いたようだった。

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