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マツダトモヒロという存在(14)

「松田先輩。」 「ん?どした、島田。」  水分補給をしてる智裕にパーカーを着た島田がタオルを渡しながら声をかけた。 「ブルペン出た時に直倫が3塁側のスタンドにいて見えたんですけど、なんか小さい男子を膝抱っこしてて……松田先輩なにか知ってますか?」 「え?知らねー。」  智裕はしっかり他人のふりをした。  スポーツドリンクを飲み干して指定の場所にコップを置くと、タオルで汗を拭って晃に近づいた。島田は疑わしい目で智裕の背中を追いかける。 「畠、四高(ウチ)の野球部が観にきてるらしいぜ。つーか清田は昨日も来てたけど。」 「あっそう…。」  晃は智裕から少し目を逸らすと口を尖らせて顔を赤らめた。  そんな晃の姿に笑いそうになるが必死に堪えて隣にいた後藤に目を向けた。 「後藤先輩、キャッチボールお願いします。」 「おう、休憩はもういいん?」 「大丈夫です。そんなに球数も投げてないので。」 「スタミナついたやんかー、さっすが天才サウスポー。」 「それ絶対心から思ってませんよね?むしろ笑ってますよね?(笑)が見えてますけど。」 「それは気にしすぎばい。さ、行こうや。」  智裕の腰を軽く叩く後藤の仕草に晃はますます自信をなくしていく。 (俺……松田にビビり過ぎとる…あんなん出来へんもん……。)

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