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ハタケくんの壁①
大学日本代表の先発ピッチャー、布田川は強かった。そしてキャッチャーもまた圧倒的だった。
高校日本代表は三者凡退で初回を終わらせられた。
「シュンちゃん頼むでー。」
「大ちゃんにも任した!」
石山たちは情けない声でベンチに戻るなり中川と大東に嫌がらせのようにプレッシャーをかけた。
「石山、どや、布田川の球は?」
守備の準備をする石山に関本監督が近づいて訊 ねた。
石山は1塁側ベンチを見ながら「あー」と情けない声を出す。
「手元でめっちゃ動きます。これ打てたらアメリカに勝てる思います。」
「やっぱあのピッチャー、ムービング使えるんか。」
「ファウル打った時にめっちゃ手ぇ痺れましたし、シュンちゃんと大東に任せましょうや。」
「アホか。お前も上位打線なんやからしっかり打て!」
「すんません。」
関本が石山の肩を軽く叩くと、野手陣はそれぞれの守備につく。
ベンチ前でキャッチボールをしていた智裕も後藤に返球すると、マスク以外を身につけベンチから出てきた晃に駆け寄った。
「畠、さっきは助かった。」
「お、おう……。」
「次も頼むな。あ、清田すぐ上にいるぞ。」
「か、関係あらへんわ!」
晃は赤面を隠すように少しうつむきながらホームベースの前についた。
そしてマスクをかぶってキャッチボール用のボールを智裕に投げて投球練習を始めた。
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