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ハタケくんの涙③

 交替させられた晃は一度ダグアウトから姿を消した。  ロッカーでアイシングをしながら俯いていると今日は制服を着た八良がやってきた。 「今どんな気持ちや、畠。」 「…………松田に、悪いて……思おて…る……。」 「今年の日本一のチームの捕手やぞ。馬橋の看板に泥塗るつもりか。」 「すんません……。」  八良は遠慮なく隣に座って、変わらず厳しい声を出す。 「何があかんかったんか、もうわかっとるやろ?」 「…………俺は……松田に、負けました……。」 「おーおー、わかっとって何で立て直せへんのや?リードするんはお前とちゃうんか?」 「はい……。」  晃はこれ以上言葉が出なかった。  八良は呆れたようにため息をつくと立ち上がり、晃のスポーツバッグを漁りだした。  いつもなら「何してんねん。」などと言い返したり抵抗するのに、今の晃にはその気力すら残っていなかった。

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