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ハタケくんの涙⑧
「覚えとけ……俺、結構独占欲強いから。」
「はう……う、ん……。」
「松田とかあの辺に本当はすっげー嫉妬してっから。」
「そんな…俺、ハチローさんみたいに顔もよぉないし…松田や中川先輩みたいにモテへんから…。」
「晃。」
恭介は親指で垂れそうになっている晃の唾液を拭って、そのまま下唇をなぞる。
「お前、涙止まったけどエロい顔してっから…ここから出したくない。」
「……そんなん…ない…。」
「ここから出したらさ、お前とはもう春まで会えねぇんだよな。」
「あ……。」
やっと通じ合った矢先に降りかかる現実を意識すると、晃も恭介と絡ませた指を強く握る。
「キョースケ……キョースケぇ……。」
今度は寂しさを埋めるためにキスをしようとした。
そーれ!いっしやまぁー!
石山が布田川を攻略したようで、出塁をした。そして続くファンファーレは、加点したという合図。
その金管楽器と歓声の音で晃は留まった。そして恭介を押して、離れる。
「また、春に会おうや…キョースケ……。」
もう涙は一滴も出ない。そんな顔をしていた。恭介は晃が去っていったあと、満足そうに静かに笑った。
(これは、明日から更に頑張らねーとな。絶対、春に会うためにな。)
「長ぇな…まだ秋がきたばっかだっつーの。」
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