980 / 1000

アカマツくんの遠い世界③

 スタンド内に入って、もよおしているわけでもなかったので天井から下がっているモニターをボーッと見上げていると、周りがザワザワとしだした。裕也も何となくそちらの方を見ると、ブレザーの制服を着た少し小柄な男子高校生がいた。  それは、昨日先発投手として勝利を収めた、智裕(幼馴染)の憧れでライバルでもある人物。 「松田八良……。」  そう名前をつぶやくと、何故か八良の方から裕也に近づく。 「あ、やっぱそや。トモちんの友達やん。トモちんと増田ちゃんのスマホでよぉ見たことある顔やわ。こんちわー。」  八良はヒラヒラと手を振りながら裕也の隣に並んで、モニターを見上げた。 「あれ?人違いやった?」 「い、いえ……あの…合ってますけど。何で俺のこと知ってんすか?」 「ゆーたやん、トモちんのスマホでよぉ見かけたからやって。」 「普通覚えませんよ。」 「俺は記憶力ええねん。せやけどスタンドで見らんでええの?もうすぐトモちん交代やで。」 「え……。」  智裕が交代する、その言葉で思い出されるのは夏の馬橋との戦い。智裕は苦しそうにマウンドを降りていった。  あの時の負の感情が蘇って裕也は震えそうになる。

ともだちにシェアしよう!