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旅の前の日③
みんなそれぞれ制服に着替えて次々と「お疲れー。」と出て行く。
智裕もスポーツバッグにテキトーに衣類やスパイクを詰め終えて出て行こうとしたら、凄い勢いで腰を抱き寄せられた。
「うぉ⁉︎ だ、誰⁉︎……赤松⁉︎」
抱き寄せた犯人は直倫だった。直倫は俯いて負のオーラを放っている。
しかしこの引き止め方は裕也 のそれと同じで、夏の大会の「智裕と直倫ホモップル疑惑」が再び智裕の頭をよぎる。
「赤松!やめろ!離せ!」
「あ、すいません……肩や腕は引っ張ってはいけないと思ったので…。」
「普通に呼び止めろよ!声出せ!」
「あ。」
「何で思いつかなかったんだよ!」
やっと解放されて智裕は深くため息を吐きながら、直倫の方を振り向いた。
「で?何だよ。」
「修学旅行の間、裕也さんが変な男に襲われないか守ってて下さい。」
「そんな男、この世にお前しかいねぇから大丈夫だ安心しろ。」
「それと裕也さんの画像を逐一送って下さい。」
「残念、俺は今回あいつと違う班だよ。優里に頼め。」
「え、松田先輩と裕也さんがセットじゃないんですか?というか高梨先輩も違うんですか!」
直倫の驚いた表情に智裕の方が驚いた。
「いつでも俺と大竹が一緒なわけねーだろ!」
「松田先輩って高梨先輩たち以外に友達いるんですか?」
「いい加減殴るぞ。」
「あれ?松田くんって宮西くんたちと誰だったっけ?」
話を聞いてた野村が割って入ると、智裕は野村を見て答えた。
「井川だよ、美術部の。俺1年の時に教科委員一緒だったし割と話すぞ。」
「へー…松田くんが特定の女子と仲良いなんて珍しいね。平等に仲良しな感じなのに。」
「井川はうちのメスゴリラだらけのクラスで唯一の良心だからな。日曜もアイツらにボロカスに言われた時にさ…。」
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