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憧れのユイさん⑧

「松田くん、今の…154km/hだよ……。」  増田の告げた結果に智裕は目が点になる。  今中はボールを返球せずに増田に駆け寄った。智裕もそれに続き、由比も3歩ほど増田に近づいた。 「おま……え、まじ?」 「え、これマジ?壊れてねーよなこれ?」 「甲子園終わって買ったばかりだから壊れてないわよ。あとこれは…終速が148km/h…今までの1番速いくらいじゃない?」 「うええええ!何これ!夢なのか?夢じゃねーよな⁉︎」  智裕は自分の頬をつねって痛がる。その様子を見た由比は「ははは」の爽やかに笑った。 「おそらく回転数も変わってないからバッターの体感速度は160に近いと思うよ。智裕くん、これが君の本当の力だ。」  由比は智裕の左手を両手で取って、大事にするように優しく握りしめた。  由比の手をとてつもなく大きく感じた智裕は左手から伝わる熱に心臓を高鳴らせた。 「しっかりとした指導者がつけば君はもっと伸びる。馬橋の松田八良から日本のエースという肩書きを奪える可能性は十分にあるよ。」  智裕は憧れの人からの言葉に驚き、再び緊張してしまう。  そして由比は柔らかく美しく笑いかけて。 「僕は智裕くんが好きだから、智裕くんと一緒に世界の頂点からの景色を見たい。」  由比の右手が智裕の手の甲をさする。智裕は全身が心臓になったかのような熱さと脈拍とで思考回路が停止しかかる。 「君はもっと上に行けるんだ。僕にその力になりたい。」 (君が、僕を救ってくれたのだから………。)

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