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憧れのユイさん⑨
翌朝、教室の席について智裕はスマホの通信アプリの連絡先一覧を眺めていた。スマホを持つ手は小刻みに震えている。
新しく登録したアドレスで表示されているのは「由比壮亮」という名前だった。
投球練習等の動画を送って的確なアドバイスをもらう為に由比のプライベート番号を教えてもらい、智裕のアドレスも由比のスマホに登録された。
ボーッとしているとスマホが振動した。なんとメッセージの送信者は由比だった。
「うわーーーーーー!きちゃったよ!マジできちゃったよ!」
智裕は立ち上がって大声で騒ぐので、隣にいた福本 が「うるせーよ!」と怒る。
プルプルと震えながらタップしてメッセージを開く。
_おはよう。昨日は突然ごめんね。僕は会えて嬉しかったよ。
「あ、会えて……うおおおおお!もう俺死んでもいい!うわあああああ!」
「だからうるせーよ!」
_昨日智裕くんに会えたから、智裕くんの課題も見つけられた。それを克服する為の練習メニューを添付するので、動画等を参考にしっかりと練習して下さい。
そのメッセージと共に、画像やURLが添付されていた。智裕はブンブンと頭を振った。
(そうだ、由比コーチは俺も戦力になれるようにこんなに良くしてくれてるだけなんだ!頑張らないと!)
「うっしゃあ!打倒アメリカーーーーン!」
智裕は拳を高く突き上げて、福本から頭をはたかれた。
そんな智裕の様子に危機感を抱いていたのは増田だけだった。
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