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大切な人の誕生日①

 9月も中旬の昼休み、智裕は裕也と宮西と直倫と昼ごはんを食べていた。 「そういやさ、ツワブキちゃんって来月誕生日だって。女子がめっちゃ騒いでた。」 「へー、プレゼント攻撃凄まじそうだな。」 「俺のクラスにもファンがいますからね。」 「ツワブキちゃんすげーモテるから大変そうだなぁ……なぁ、彼氏?」  彼氏と呼ばれた男は放心して開いた口が塞がらず、食べていたごはんがポロリと口から出た。 「…………………おい、トモ……お前…まさか……知らなかった?」 「…えっと、その………。」  智裕の目は泳ぎまくる。 「うわー…アホもここまでくると致命傷だな。」 「松田先輩、石蕗先生と付き合ってどれくらい経ってます?」 「ご、5ヶ月……?」 「そんだけ付き合ってて誕生日の話題にならねーの?」 「いや…俺、4月2日だから……もう付き合い始めた時には過ぎてて……。」  額からは汗がじわりと出てくる。 「で、大竹、ツワブキちゃんの誕生日いつ?」 「確か10月22日って聞いたぞ。」 「あ、松田先輩、アメリカにいる時期じゃないですか。」 「終わったな。」  そのまま椅子から落ちて倒れた。  ガターン、と派手な音がしたがクラスの誰も音に驚くだけで心配しなかった。

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