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大切な人の誕生日⑤

「この地理関係からも分かるように、カリブ海の中南米諸国とかなり近い為、他の大都市に比べてヒスパニック系やラテン系の住民が多い。英語だけでなくスペイン語も公用語なのでどちらも使えればなお良し、だろうが…まぁ、松田は日本語も怪しいからナンパは無理だろうな。」 「なんかついでにディスるのやめない?俺だってブロークンハートしちゃうよ?泣いちゃうよ?」 「そして年間を通して温暖な気候で過ごしやすいので移住してくる人も多いので、様々な宗教や文化が入り乱れている。」 「はい!じゃあ俺は拓海さんにお誕生日プレゼントは何をあげたらいいですか⁉︎」 「石蕗先生ならマカダミアナッツチョコでも喜んでくれるだろ。」  拓海が智裕に対してどれだけチョロいのか裕紀は理解していた。 「それか、セレブ御用達のブランドアクセサリーとか?」  後ろの方から高梨が茶々を入れてきた。 「優里は俺の財布事情知ってるよな?」 「アメリカでマジックテープの財布は恥ずかしいわよー。」 「もう替えてるっつーの!いつの話してんだ!」  智裕は昨年初めての彼女と付き合っている時までマジックテープの財布だった。  帰宅部になった時に裕也と宮西にそれを指摘されて今も使っている黒の長財布に替えた。 「ちなみに日本との時差は13時間な。向こうの時間で10月21日の午前11時頃に電話でもしてやればいいんじゃねーの?」 「……21日の11時…って。」  智裕は机の横に掛けていた通学カバンからファイルを取り出して日程を確認した。 「決勝戦始まる1時間前なんですけど。」  そして智裕はその場にしゃがみ込んで再び泣いた。

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