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ツワブキさんが欲しいもの①

 放課後、智裕は部活に行く前に保健室に駆け込んだ。  そして拓海以外に誰もいないのを確認すると、拓海に土下座をした。 「本当にごめんなさい!」  突然の土下座に拓海は戸惑うしかなかった。 「ど、どうしたの?顔上げて?何かしたなら、ちゃんと話そう、ね?」  拓海は膝をついて智裕の肩を持ち、顔を上げさせた。  智裕は涙目になって、マウンドではキリッと上がる眉も情けなく下がっていた。 「どうしたの、本当に…俺、何かした?」 「ううん…違う!俺が……ごめんね拓海さん!俺、拓海さんの誕生日知らなかった!」 「………え、それだけ?」 「それだけ?じゃないよ!重大だよ!恋人の誕生日って!でも…でもぉ……!」  智裕は堪えきれず涙を流して拓海に抱きついた。  拓海は「よしよし」と智裕の背中に手を回してさすってあげる。 (なんか…悪いことしちゃったかも……。)  拓海は甲子園の初戦を松田家で見た日、U-18日本代表のおおまかなスケジュールを見て、自身の誕生日のことを黙っていた。

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