879 / 1000
マツリちゃんのイヤイヤ期⑤
静かになって数秒、智裕が「はぁ」とため息をついてやっと電話で話を始めた。
『た、拓海さん?』
「あ、えっと……ど、どうしたの?」
『あー、オフクロから話聞いて拓海さんに電話かけようとしたら、茉莉ちゃんが部屋に入ってきて追いかけた智之もずっと部屋から出なくて、そしたら茉莉ちゃんが通話開始のボタン押しちゃってたみたいで……ごめん、うるさかった?』
「うるさくはないけど……ご、ごめんね、まーちゃんが……。」
(智裕くんにまで…あーもう、やだ……怒ったって意味ないの分かってるんだけど……甘えすぎだよ俺……。)
またも自己嫌悪に陥り、拓海は黙り込んでしまった。その異変を察知したらしい智裕が、優しく声をかける。
『拓海さん、そっち行こうか?』
「……え…で、でも、智裕くん明日も部活とか練習で朝早いでしょ?俺も久し振りに1人を満喫してるから大丈夫だよ。」
『そう?でも声が大丈夫そうじゃないけど。』
こういう時の智裕は本当に鋭い。拓海はこれ以上の嘘が思いつかなくなった。
『拓海、玄関の鍵開けてて。すぐ行くから。』
ともだちにシェアしよう!