894 / 1000

ツワブキさんのモヤモヤ④

「とーと!」  茉莉が下を指して、そう言うから、拓海は「どうしたの?」と覗き込むように下を見た。  この団地には不相応な高級スポーツカーが停車していて、右側のドアが開いて出てきたのは私服の智裕で、左側からは黒髪の背の高い男性が出てきた。 (あ……由比、壮亮……。)  楽しげに2人が笑う声が聞こえてきて、拓海は見ていられなくて家に入った。 「ぱぱ、ないないよー。」 「うん、ないない、ね。」  泣きそうな拓海を茉莉が慰めてくれた。拓海は茉莉をギュッと抱きしめて、柔らかな体温に安心を求めた。 (大丈夫、大丈夫……だって、大好きって……でも……でも……。) 「やっぱり、イヤだよ……。」

ともだちにシェアしよう!