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ツワブキさんの不安①

 同じスポーツニュースを智裕も見ていた。  それは自宅ではなく、自宅の隣の恋人の家で。 「いやマジで散々だったわ……うん。」  練習終了後の洗礼を思い出した智裕は、後ろから抱きしめている拓海の肩に顔を埋めてため息を吐いた。 「ふふふ…なんかいつも通りで俺は安心したかな?」 「あ、安定のいじられ役とか思ってる?」 「うーん、ちょっと?」 「……拓海さんも段々意地悪になってる気がするんだけど。」 「そんなことないよ?」 「えー…。」  智裕はヒョイッと拓海を抱き上げて向かい合わせた。 「……智裕、くん。」 「うん?」 「その……えっと……。」 (由比コーチって人と…ちょっと親密過ぎないかなぁ…なんて言ったらダメ、かな?)  拓海が言葉を躊躇(ためら)っていると、智裕がソファに置いてたスマホが振動する。智裕は気づかなかったが、拓海の視界には入ってしまった。  こんな夜遅くに、智裕へのメッセージを送ってきた人の名前を。

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