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第6話

リビングではまず、雑誌の片付けから。 最近は外に出かけずに、部屋でまったりと過ごすことが多かったから、思っていた以上に量があって。 さすがに全部は持ち帰れないし、ぎゅっと紐で縛って帰りに捨てていくことにする。 雑誌が片付いたら、次は借りたままだったDVDをバッグから取り出して、ラックにしまう。 すすめられて借りたけど、結局見ないままだったやつ。 これを渡してくれたときの、啓吾さんの子どもみたいに楽しそうな笑顔を思い出したら、何だかちょっと笑えた。 お気に入りのおもちゃを紹介してくれる子どもみたいだったから。 「あーあ。結局一人じゃ見なかったなあ」 楽しそうにしている啓吾さんには言えなかったけど、本当は映画を見るの、そんなに好きじゃなかったんだよね。 僕、ドラマとかもほとんど見ないし。 でもね。 映画を見るときは二人並んでソファーに座れるから……だんだん二人の間の隙間がなくなって……啓吾さんのぬくもりが伝わってくるのが嬉しかったから…… だからいつも一緒に見てたんだ。 映画が好きなふりなんかして。 きっと啓吾さん、知らなかっただろうな。 もっと本当のことを言うと…… 部屋にいるのもいいけれど、本当は二人でお出かけするほうが、僕は好きだったんだけど……それも、最後まで言えなかった。 仕事で疲れてて、のんびりしたいのだろうし…… 僕なんか連れて歩くのは、嫌なのかもしれないし…… 考えれば考えるほど言えなくって…… もし、そんなおねだりができていたなら……そんなことが言える僕だったなら……二人の関係は少し違っていたかもしれないって、今頃になって思ってるんだ。 ……もうそれは、手遅れ、なんだけど。

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