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第7話

続いて、リビングとつながっているキッチンへと入る。 まずは棚に置かれている食品ストックの入ったかごをごそごそ……チョコレートとクッキーと…… 啓吾さんは甘いもの苦手だから、僕が買ってきたお菓子を食べることはないはず。 どうせ捨てられるものならば、もって帰ろう。 それから次は。 「うーん……どうしよう……」 食器棚の前に立って中を見ると、手が止まってしまってちょっと悩んだ。 そこには、啓吾さんのものに並んで、これまで僕が使ってきた食器も置いてある。これって、もって帰ったら駄目かなあ…… とりあえず、テーブルの上に出してみる。 ガラスのコップにマグカップ、ご飯茶碗にお箸… そのどれもが「これは悠希のぶん」と言って、啓吾さんが用意してくれたもの。 置いていくのは何だか心残りで…… でも、買ったのは僕じゃないから、持ち帰るのは何だか違う気がするし…… 残していけば、しばらくは「あの人」が使うのかもしれないけど…… それって…… それって、何だか嫌だ。 だからといって捨てるのも無理だ。僕にはできない。 「駄目だ……決められない」 仕方なく、持ってきたゴミ袋のうち、小さいものを選んで食器を入れていく。 このまま捨てるのか、出して使うのかは、啓吾さんにおまかせしよう…… ──────おまかせ? 啓吾さんに「おまかせ」するの? 僕が自分で、いっぱい悩んだけれど、ようやく自分で「さよなら」しようって決めたのに? それなのにこうしてまた、大事なところで啓吾さんに頼ってしまうの? これじゃあ、今までの僕と何も変わらない気がする…… 駄目だよね、こんな気持ちじゃ。 こんな僕のままじゃ、前になんて進めない。一人で歩いていけない。 別れを決めたのは僕なんだから。 変わらなくちゃ……もっと強い自分に…… 変わらなくちゃ! 食器を入れた袋を掴むと、燃やせないゴミ用のゴミ箱の蓋をあけて、えいっと突っ込む。 そのまま勢いよく蓋をしめて、ふぅ、と息をはいた。 ───これでいい。 僕の存在を感じさせるものはすべて片付けて、消える。 迷いは消して、がんばらなくちゃ。

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