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第11話
─────────────────
───────────────うき
──────────────ゆうき
「──────おい、悠希!起きてんのか!?」
「──────────うぇっ?」
──気づくと目の前に大きな手のひら。ぶんぶんと上下に振られている。
何?
何?何?
きょろきょろと周りを見回すと、講義室には誰もいない……今は講義中のはずだけど。
「……いつまで寝ぼけてんだ!」
ぺちっ!っと音がなって、僕のおでこに痛みが走った。
「────いたっ!……痛いよ、貴志ぃ…」
ずきずきしているおでこをさすって、目の前の友人に苦情を言う。
「目を開けたまま寝てるお前が悪い。とっくの昔に講義は終わってて、もう昼休みだって気づいてるか?」
「───え、嘘。もう、そんな時間!?」
びっくりして立ち上がる。……が、僕の腕を掴んだ貴志によって無理矢理座らされた。
「………ちょっと待ってろ。もう少しで来るから」
「来るって誰が?」
「いいから……ってかやっぱりお前、何か痩せたなぁ。ちゃんとメシ食ってる?」
貴志は僕の腕やら手首やらを握って、呆れた声で言う。
うっ。食べて、ません。
あれからひとつき、何かを食べたい気持ちにもなれず、何を食べてもおんなじ味に感じて、食事自体が億劫になっている。……正確にいえば食事だけじゃなく、いろいろなことがもう、どうでもよくなっていた。
「………やっぱりか。だと思って、ちゃんと手配してある」
手配?
何それ、と尋ねる前に、ガチャっと音をたてて講義室のドアが開いた。
「ごめーん!お待たせー!」
「おせーよ、梨花!」
「ごめんてばー。だって、包むのに時間がかかったんだもーん」
そう言って貴志の彼女、梨花ちゃんは僕の前に来ると…
「はい、高瀬君のぶん」
かわいらしい柄の袋を机の上にのせた。
────え?
訳が分からず貴志のほうを見ると、『うん』とうなずく。そして、あごで指し示した。開けてみろって意味だろう。
袋の中身を出してみると、中からおにぎりが二つと小さなお弁当箱。その中には玉子焼きやウィンナー、コロッケなどが、ところせましとつまっていた。
「ここんとこずっと、昼飯食べてないだろ?食べないと力でねぇーし、うまくいくものもうまくいかなくなるもんだぞ。ちゃんと食べて元気出せ」
………僕のことなんて、何でもお見通しなんだなあ。ちゃんと食べてないことも…ぐるぐると迷いの中にいることも…
二人ともにこにこしながら僕を見つめてる。
友人の気遣いに感謝しつつ、僕は手を合わせてから箸をとった。
「────いただきます」
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