11 / 105

第11話

───────────────── ───────────────うき ──────────────ゆうき 「──────おい、悠希!起きてんのか!?」 「──────────うぇっ?」 ──気づくと目の前に大きな手のひら。ぶんぶんと上下に振られている。 何? 何?何? きょろきょろと周りを見回すと、講義室には誰もいない……今は講義中のはずだけど。 「……いつまで寝ぼけてんだ!」 ぺちっ!っと音がなって、僕のおでこに痛みが走った。 「────いたっ!……痛いよ、貴志ぃ…」 ずきずきしているおでこをさすって、目の前の友人に苦情を言う。 「目を開けたまま寝てるお前が悪い。とっくの昔に講義は終わってて、もう昼休みだって気づいてるか?」 「───え、嘘。もう、そんな時間!?」 びっくりして立ち上がる。……が、僕の腕を掴んだ貴志によって無理矢理座らされた。 「………ちょっと待ってろ。もう少しで来るから」 「来るって誰が?」 「いいから……ってかやっぱりお前、何か痩せたなぁ。ちゃんとメシ食ってる?」 貴志は僕の腕やら手首やらを握って、呆れた声で言う。 うっ。食べて、ません。 あれからひとつき、何かを食べたい気持ちにもなれず、何を食べてもおんなじ味に感じて、食事自体が億劫になっている。……正確にいえば食事だけじゃなく、いろいろなことがもう、どうでもよくなっていた。 「………やっぱりか。だと思って、ちゃんと手配してある」 手配? 何それ、と尋ねる前に、ガチャっと音をたてて講義室のドアが開いた。 「ごめーん!お待たせー!」 「おせーよ、梨花!」 「ごめんてばー。だって、包むのに時間がかかったんだもーん」 そう言って貴志の彼女、梨花ちゃんは僕の前に来ると… 「はい、高瀬君のぶん」 かわいらしい柄の袋を机の上にのせた。 ────え? 訳が分からず貴志のほうを見ると、『うん』とうなずく。そして、あごで指し示した。開けてみろって意味だろう。 袋の中身を出してみると、中からおにぎりが二つと小さなお弁当箱。その中には玉子焼きやウィンナー、コロッケなどが、ところせましとつまっていた。 「ここんとこずっと、昼飯食べてないだろ?食べないと力でねぇーし、うまくいくものもうまくいかなくなるもんだぞ。ちゃんと食べて元気出せ」 ………僕のことなんて、何でもお見通しなんだなあ。ちゃんと食べてないことも…ぐるぐると迷いの中にいることも… 二人ともにこにこしながら僕を見つめてる。 友人の気遣いに感謝しつつ、僕は手を合わせてから箸をとった。 「────いただきます」

ともだちにシェアしよう!