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第12話

久しぶりに、まともに食事する……ちゃんと食べられるか心配だけど、二人の気持ちにはこたえたいし…… 箸で玉子焼きを半分にし、思いきって口に入れる。 「……………おいしい」 少し甘めの味付けが、口に優しい。 「よかったー!口にあって」 「……お前、ちゃんと料理できたんだな」 「まあ、これはお母さんに作ってもらったからねー」 「はあ!?なんだそりゃ!自分で作れよ」 「だって、お母さんが作ったほうがおいしいんだもん」 わいわいと言い合いをしながらも、二人は何だか楽しそう……こんなやりとり、僕も啓吾さんとしたかったなあ。 啓吾さんみたいな大人の人に、軽口なんて言えるはずもなかったけど。 ……生まれてしまった少しさみしい気持ちをごまかしつつ、残りのおかずを黙々と口に入れていく。 半分ほど食べたところで、貴志が尋ねてきた。 「───で?お前がこんなに落ちてんのは、やっぱりあれか?彼氏とうまくいってないの?」 ──────────────ん? 彼氏? 今、彼氏って言った? 僕、啓吾さんと…男の人と付き合ってること、誰にも言ってなかったはずだけど!? ……鏡があったなら、顔が赤くなったり青くなったりしているのがよく分かっただろう……変な汗、出てきた……どうしよう…… 「──な、なんのことか、よく、わかんない……けど……」 しどろもどろでこたえると、 「いーよ、今さら隠さなくても。別に偏見とかないし」 「実はねー、前に高瀬君と彼氏サンが歩いてるとこ、見かけたんだよね。二人とも幸せオーラが出まくってたから、そうなのかなあ…って」 し、幸せオーラ? しかも、出まくり!? ……そんなとこ、目撃されてたなんて。穴があったら入りたい気持ちなんだけどっ。 「俺たち、そこまでは知ってるからさ……だから、話せるなら話してみろよ。一人でぐるぐる悩むより、ましだと思うぞ」 ……そう言う二人の顔は、本当に心配している顔で…… ……そして僕も、誰かに聞いて欲しかったのも本当で…… 僕はそっと箸を置くと……二人の間に起こった出来事を順に話し始めた……

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