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第24話

「いやだっ!」 もう一度、大きな声で言うと、啓吾さんの手を、箱をもった手をぐっと押さえつけた。 「………悠希?」 啓吾さんの困惑する声が聞こえる。でも、感情が溢れ出すのを止められない… 「これは、僕のために用意してくれたんじゃないの?僕のこと、考えて選んでくれたんじゃなかったの?」 「……それは…そうだけど………でも…これが…」 「うるさい!」 こんなこと言ってたら、嫌われるかも……分かっているのに押さえられない。 涙もどばどば出てきて、なんだかもう、ぐちゃぐちゃだ…… 「なかったことになんかしない!絶対にしない!この指輪は僕のこと、好きだからくれたんでしょ?だったら、僕から取り上げないでよ!」 これが自分のものだったらいいのにって、啓吾さんの帰りを待ちながらずっと思ってた。 こっそりバックから取り出しては、月の光に照らして……綺麗に光るこの指輪が、啓吾さんの僕への気持ちであったならと何度も祈った。 寒い通路でひたすら待っていられたのは、この指輪が僕の指におさまる可能性を捨てきれなかったからだ…… 今回のすれ違いはすべて、僕が悪かったことは分かっているけど……でも……でも…… 「……僕は……ほしぃ……、この…指輪……」 「…………こんなプレゼント、重たくない?」 「………うー……重たく……なんか……うぅ、……ないよ…」 「─────そっか」 啓吾さんは小さくつぶやくと、箱を押さえてる僕の手を引き離した。 ああ、やっぱりだめなの? 僕にはこの指輪、この指輪…… 啓吾さんは、泣いてばかりの情けない僕の横に座ると、箱の蓋をそっと開けた。 そして指輪を手に取ると、僕の体を優しく自分のほうへ向けさせた。 「──やばいな。想像以上に緊張する……」 そう言って、僕の左手を恭しくとると、ゆっくりと指輪を嵌めていった…… 指の付け根までしっかり嵌まると、啓吾さんは僕の左手と指輪にそっと口づけて言った。 「これから先もずっと横にいて、僕と一緒に生きてくれませんか?」 ───返事をしたくても、ふるえて声がでなくて… 返事の代わりにぎゅっと抱きついた。 そして、何度も何度も頷いた。 ───やっぱり泣き虫だなあ、と言った啓吾さんの声は、またもや涙声で… それもなんだか嬉しくて… 僕は間違いなく、世界で一番幸せな人間だと思った。 end

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