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寝惚ける 第1話
ふと意識が浮上して、目が覚めた。
ベットサイドの時計に目を向けると、まだ午前3時。目覚めるには大分早い…
横には自分の体にぴったりとくっついて眠る恋人の姿。猫のように背中を丸くしている。
すー、すー、という規則的な寝息と少し開いた口もとが愛らしくて…
「………かわいい」
思わず独り言を洩らしてしまった。
この何よりも大切な恋人が自分の前から消えたのは、ひとつきほど前のことだった。
一体何が起こってるのか、意味がわからず……『つらい』と言われてしまえば、追いかけることもできず……
正直これまで何人もの人とつきあってはけれど、失ってしまうことが恐ろしく思える人は初めてだった。だからこそ、指輪を贈ってでも、自分のもとに繋ぎ止めておきたかったのだが…
しかし、そんな最愛の恋人にとってみれば、自分と過ごすことなど苦痛でしかなかった……
思い知った現実を受け入れることもできず、ただただ喪失感におそわれるばかりで……昨日までの1ヶ月、それをごまかすために仕事と酒に逃げるだけの日々を過ごした……
無茶な生活をして、そのせいで倒れたとしても、それはそれで一向に構わないと思っていた。
彼がそばにいない自分など、何の意味もない。
彼が愛してくれない自分など、何の価値もない。
自分という存在が消えてなくなろうと、どうでもいいことだと思えたから……
でも、こうして帰ってきてくれた。自分の横に。
『嫌いにならないで』と、泣いてすがってくれたのだ…
───嫌いになんて、なれるはずがない。
こうして横で眠る……ただそれだけで、こんなにも心を満たしてくれるのに……
そっと瞼に口唇をよせる。
よかった。戻ってきてくれて、本当によかった。
あれこれ考えていたからか、すっかり目が冴えてしまった──仕方ない。水でも飲んでこよう。
隣に眠る恋人を起こさないようにそっとベッドを抜け出し、キッチンへ向かった。
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