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出かける 第1話
12月も中ごろの日曜日。
ふと時計を見ると、もうすぐ正午という頃。
そろそろ昼食を作るかな……
冷蔵庫を覗いたが、昼食を準備するにはどうにも材料が足りない……買い物に行ったほうがよさそうだ。
リビングに行くと、ベランダ横の日がよく当たっている床に直に座って、悠希はぼんやり洗濯物を眺めていた。
ひなたぼっこしてる猫みたいだ。
「───悠希」
声をかけるとこちらを振り返り、はにかんで笑う。
───うん、かわいい。
「ちょっと買い物行ってくるけど、悠希はどうする?」
ぴょん、と立ち上がると「僕も──」と言って……で、そこで急に黙ってしまった。
───ん?
あんなにかわいく笑ってくれたのに、とたんに曇ってしまった顔……いくらなんでも、これはおかしい。
「……いや、あの……僕、留守番してます」
───やっぱりおかしい。
最近わかってきた。悠希は何か我慢するとき、言葉がやけに丁寧語になる。
ということは、今、何か我慢しているんだ……
「……留守番するの?」
ちょっと探りをいれてみるか…
「……うん……待ってます……」
「……一緒に行きたいんじゃない?」
───ぴくっ。
悠希の頬が強張った。これか?
何か言いたげな顔なのに、ふるふると首を横にふった。
「……そっかー……悠希と一緒に買い物行きたかったなー」
ちょっとしらじらしい感じもするが、そんなことを言って悠希の様子を伺ってみると…
「啓吾さん……僕と一緒に出かけたいの?」
「もちろん」
「一緒にいるの……恥ずかしくない?」
………はあ?恥ずかしい?
「僕を連れて歩くの、嫌でしょ?」
自分で言ってて落ちこむのか、だんだん俯いて下を向き、よく見れば涙目になっている。
………何でそんな考えにたどり着いてしまうかなあ。
「──悠希、ちょっと話をしよう」
昼飯は少し位遅くなっても平気だ──それより悠希の誤解を取り除くことのほうが、ずっと大切だ。
側にいって、俯いたままの悠希の頭をよしよしと撫でてやると、ぎゅーっと抱きついてきた。
「悠希は俺の大切な恋人だよ。恥ずかしいなんて思ったことないよ」
「……本当に?」
「本当に。だから、悠希の本当の気持ち、知りたいなあ…」
俺の肩にぐーっと押し当てていた顔を上げてこちらを窺うので、にっこり笑い返してやると、顔を真っ赤にしてまた肩に顔を押し当てた。
「………あのね」
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