31 / 105

口づける 第1話

「今度うちに来ない?夕食を食べにおいでよ」 長谷川さんはそう言ってにっこり笑った。 その笑顔に思わず目を奪われ、ぽー…っとしてしまう。 付き合いはじめてもうすぐ2ヶ月……年上の、大人の恋人に、どんどん夢中になっていく自分を感じる毎日だ。 一体どこまで好きになるのだろう…… 「───高瀬君?」 「あっ、はい!」 ぼんやりしてしまった。変に思われなかったかな… 「何か食べたいものとか、ある?」 「……あの、僕、シチュー食べたいです」 迷わずリクエストをする。 実家の母がよく作ってくれたけど、大学に入ると同時に一人暮らしを始めてからというもの、しばらく食べてなかったから。 「分かった。じゃあ今週の土曜、バイトが終わってから待ち合わせよう」 ───楽しみにしてて。 大きな優しい手が僕の頭を撫でる。 触ってもらえるのが嬉しくて、きっと顔がふにゃふにゃに崩れていると思う… 長谷川さんの家にいくのはこれが初めて。どんな部屋なんだろう。 次の土曜日がとっても楽しみで。わくわくしすぎて眠れなくなりそう……

ともだちにシェアしよう!