32 / 105

第2話

約束の土曜日。 駅前のコンビニでのバイトが終わって店を出ると、長谷川さんが待っててくれた。 「お疲れ様」 「待っててくれたんですか?すみません!」 今、電話するところだったのに! 慌てて駆け寄ると… 「いいんだよ。俺が待っていたかっただけだから」 そう言うとにっこり笑って僕の背中を押した。 「うちはこっち。ちょっと歩くけど大丈夫?」 「はい!」 少し歩くくらい平気……というか、長く歩いたほうがいいな。 おしゃべりしながら歩くなんて、散歩しているみたいで楽しいだろうから。 のんびりてくてく歩いていると、「ここだよ」という声。 10分ほど歩いたところで、長谷川さんのマンションにたどり着いた。 わー……と思わず声に出てしまう。僕の住んでいる安い学生アパートとはやっぱり違うや。 「……素敵なマンションですね」 エントランスに入ってからもきょろきょろしてしまう。仕送りとバイト代でやりくりする僕には、とても無理な物件だよ。 「そう?オートロックでもないし、新しくもないし、普通だと思うよ」 そう言って、長谷川さんはエレベーターのボタンを押した。 「うちは6階だから」 二人でエレベーターに乗り込み、6階へ。目的の階について真っ直ぐ通路を進むと、奥から2番目の部屋で止まった。 「───ここだよ」 表札には『長谷川』の文字。ポケットから茶色のキーケースを取り出すと、鍵を開けた。 ゆっくりドアが開く…… 「ようこそ、我が家へ」 そう言うと、長谷川さんは僕を中へと導いた。

ともだちにシェアしよう!