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第3話

「───おいしい」 シチューをひとさじすくって口にしたとたん、思わず声が出てしまった。 長谷川さんを見ると、何だか嬉しそうな笑顔。またまたぽうっ…としてしまう。 家に着くとすぐに、夕食をふるまわれた。 キッチンのダイニングテーブルに置かれたのは、ビーフシチューにバゲット、海老とブロッコリーのサラダ──どれもとってもおいしくて。 「長谷川さん、料理上手なんですね」 「そんなことないよ。一人暮らしが長いから少しできるだけ。たいしたものは作れないから」 そう言って、謙遜して微笑むとバゲットをちぎった。 そんなものかなあ……もう3ヶ月近く一人暮らしをしているけれど、僕の料理のレパートリーといえば野菜炒めくらいなんだけど…… とてもじゃあないけど、長谷川さんに食べさせるなんてできない。 「料理ができるなんて、かっこいいです。僕なんて何もできないから…」 鍋焦がしておしまいかも……と、自嘲する。 僕も頑張ったらできるようになるかなあ……本当に不器用なんだけど…… 「じゃあ、今度は一緒に作ろうか」 「───え、いいんですか?」 「もちろん。一人で食べても寂しいしね。高瀬君がいいなら、来週にでもどう?」 「はい!」 二人で料理……なんだか楽しそう。 何より、もっともっと仲良くなれる気がする。 優しく教えてくれる長谷川さんと、その隣にいる僕……考えるだけで照れてしまって、ちょっと困った。

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