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第4話

夕食を食べ終わり、食器をシンクに運んだところで、ちょっとした言い争いになる。 「僕が洗います」 「いや、俺が洗うよ」 ……食器を洗う洗わないで、どちらも一歩もひかないんだ。 「でも、ご飯作ってもらったし…何もしないわけには…」 「何もしなくていいんだよ。高瀬君はお客さんなんだから」 ………お客さん? 何だろう……長谷川さんの一言にもやもや…… 「……………」 「…………高瀬君?」 黙ってしまった僕に気づいて、長谷川さんが名前を呼ぶ。 だって… 「……僕はお客さんじゃないです。恋人です」 長谷川さんのぽかーん…とした表情。 「恋人だから、お手伝いしたいんです……ダメですか?」 してもらうだけじゃなく、僕も何かしてあげたいんだ……恋人だから。 すると長谷川さんは嬉しそうに笑って… 「分かった。まかせるよ」 僕の頭を撫でてくれる。何だか誉められた気分。 「じゃあ、洗い終わるまでのんびりしててください!」 そうして食器を洗う役目を勝ち取った僕。 最後の1枚を洗い終えると、長谷川さんのいるリビングに向かった。 キッチンから続くリビングは、本当にすっきりとしたシンプルな部屋だった。 大きなテレビの下にラック。本やDVDが並べられた棚がひとつ。ソファとローテーブルのセットにいくつかの観葉植物。 狭い部屋に荷物を詰め込んでいる僕とは大違いだ。 そのソファに身体を預けて、長谷川さんは……目を閉じていた。 「………長谷川さん?」 もしかして、寝ているのかな…… 声をかけてみるけれど、ぴくりとも動かない。 どうやら、本当に寝てしまったようだ。

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