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第8話
長谷川さんの家に行くのは、あの日以来だ。
先週このドアの前に立ったときもドキドキしていたけど、今日もやっぱりドキドキしている。
だけど、同じドキドキなのに、胸の苦しさがこんなにも違うなんて……
もう、今日は会うのをやめようかと、何度も考えた。でも、ただの勘違いかもしれない可能性だってあって。
わからないままではモヤモヤした気持ちはおさまらないから……
……今日はちゃんと確かめよう。
それが、たくさん悩んで出した結論だった。
勘違いだったなら、いつものように二人で過ごして。
もし僕の予想が当たって、僕がもう必要なくなってしまったのなら……そのときには……
────ピンポーン。
深呼吸して心を落ち着けると、インターホンを押した。
「──いらっしゃい」
ガチャとドアが開いて、長谷川さんが迎えてくれた。
ちらっとしか顔が見れず、いつもと同じなのかどうかは分からない…
長谷川さんの後についてキッチンに向かうと…
「……いいにおい…」
「今日は、ハンバーグにしたん、だ……え?」
振り返って僕の顔を見た長谷川さんが、驚いた顔をした。
……え?何か変かな?
「何かあったの?……目が腫れてる…」
………目?
目が腫れてる?
……そうだ。昨日いろいろ考えてしまい、泣きながら寝ちゃったんだった……
長谷川さんはちょっと困ったような顔をして、僕の頬に手を伸ばしかけ……はっとしたように手を止めて引っ込めてしまった。
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