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第2話
内村さんが案内してくれたカフェは、白を基調とした店内のあちこちに輸入雑貨と観葉植物が配置されていて、あんまりよくは分からないけれど……女の子が喜びそうな感じの店だった。
二人ともケーキセットを頼み、しばらくすると紅茶とケーキが運ばれてきた。
内村さんが言うには、ここはタルトが美味しいそうで、僕は季節のフルーツタルトを、内村さんはチョコムースタルトを注文した。
一口食べてみると…
「わっ……美味しい…」
タルト生地はサクサクしていて、その上にのったカスタードクリームは甘すぎず……でもバニラの香りが口に広がって……フルーツもとっても瑞々しくて……つまり、とっても好みの味だった。
そんな僕を見て「よかった」と微笑むと、内村さんもケーキを口に入れた。
「……田中さんも甘いもの、好きなんですか?」
二人で一緒に来るのかな?
でも、田中さんのイメージとは違うな……啓吾さんと同じで甘いものは食べなさそうだけど…
「先輩はねえ、本当は甘党なの。でも、甘いものが好きなことが、自分には似合わないって思ってるみたい」
ケーキをつんつんとつつきながら、おかしそうに言った。
「僕がケーキを注文しても自分の分は決して頼まないの。でも、ホントは食べたいから羨ましそうにしてるんだよね」
そう言ってセットで頼んだ紅茶を一口飲むと、「だから、もう食べきれないって言って、少し分けてあげるの」と笑いながら言った。
その顔は困ってるのでもなく嫌がっているのでもなく、愛しくて仕方がないという顔で……本当にこの人は田中さんのことが好きなんだな。
「田中さんのこと、何でも分かるんですね」
「何でもは無理だけど……もう何年もずっと好きだからね。大学1年のときに出会ったから、もう7年にはなるのかな?」
「大学1年で知り合ったのなら、僕と一緒ですね」
僕が啓吾さんと出会ったのは、僕が大学に入ってすぐの頃だった。
「へー……二人はどうして出会えたの?大学生と社会人じゃ、接点も限られてるよね?」
内村さんは興味津々といった顔で、尋ねてきた。
そう言えばこんな話、今まで誰にもしたことないかも…
「……聞きたいですか?」
「聞きたい!聞きたい!」
「……田中さんには秘密ですよ?」
「もちろん!」
ちょうどいい温度になっていた紅茶を一口飲むと、僕は啓吾さんと出会った頃の自分のことを振り返りはじめた…
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