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第6話
次の日はバイトが入っていた。
いつもと同じ仕事なのに、なぜか落ち着かなくてそわそわしている。
昨日、あれから家に帰って、布団に転がりながらいろいろ考えた。
どうしていつも、僕のレジに並ぶのか?
どうして僕がいない日は、コンビニに来ないのか?
どうして?
どうして?
あれこれと考えて、これかなと思う答えには……とりあえずは、至ってみたものの、かと言ってそんなことがあるのだろうかと信じられないし……
だってものすごいイケメンさんだ……そんな人が僕のこと……
「──────せん」
僕は至って普通の大学生だし……
見た目だって、平凡だし……
「────みません」
まさか、僕なんかを……
「───すみません!」
「っっ!!!……あ、はいっ!!いらっしゃい、ま…せ……」
考え事をしていたら、思わずぼうっとしてしまっていた。
あわてて返事をし、顔を向けると…
「煙草一箱ください」
───『7時15分の人』が立っていた。
「す!す、す、すみません!何番ですか!?」
「いいえ、大丈夫ですよ……32番を」
「大丈夫」と言ってくれたけれど、顔は完全に笑いをこらえていて……情けないところを見られてしまって恥ずかしい!
きっと今、顔は真っ赤だ。
「あのっ!えーと、よ、450円です」
いつもと同じことをするだけなのに、何故か体がギクシャクしている。取った商品を、思わず落としそうになり、さらにあわててしまう。
まるでこの手が自分の手じゃないみたいだ。後ろの棚から正面へ向きなおしたところで、頭が真っ白になる。
「…………」
「…………」
……えーと、このあとどうするんだった?
次にしなければいけないことが、何にも浮かんでこない…どうしよう…
「──シールでいいですよ?」
「あっ、はい!ありがとうございます!」
あわててシールを貼る。
そうだ。落ち着け。このあとは…
「……500円お預かりしましたので、50円のお返しです」
……お釣りとレシートを渡して終わりだ。
考え事をしていたせいでわたわたとしてしまったが、何とか無事にレジ対応ができた。
ほっとして、後は「ありがとうございました」と見送るだけ……見送るだけって分かっているのに、何故かまた声が出なくなった…
あんなにあたふたして、ドキドキが止まらなかった僕の胸…
それが今度は……お礼を言おうと彼の顔を見た途端、胸がぐうっと締め付けられるように苦しくなる。
苦しくて……苦しくて……思わず…
「─────あのっ!!」
言うことなんて、何一つ考えてもいないのに、無意識に話しかけてしまった。
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