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第2話
心なしかいつもより騒がしい電車に揺られているうちに、目的の駅に着いた。
ホームに降り立つと携帯電話を取り出して、駅に着いたことを悠希にメールする……が、すぐには見れないだろう。悠希は今夜、バイトだ。
別れていた1ヶ月の間に、悠希のバイト先では12月分のシフトの希望がとられて、今年のクリスマスは一人で過ごすと思っていた悠希はクリスマスもイブも、あえてバイトを入れていた。
残念ではあるが「……バイトしていれば、啓吾さんのこと思い出して寂しくなることもないと思ってたから……」なんて涙目で言われたら、返す言葉もない。
よしよしと頭を撫でて抱きしめながら、夕食は駄目でもせめてケーキぐらいは一緒に食べて、泊まっていってくれるようにおねだりすると、悠希は腕の中で何度も何度も頷いていた。
「─────おっ…」
そんなことを考えていると、手に持ったままだった携帯電話に着信が入る。相手は――悠希だ。
急いで出ると、いつもの温かい声が耳に入ってきた。
『もしもし、啓吾さん?』
「うん。悠希、バイトは大丈夫なの?」
『んとね、今ね、休憩中だったんだ。だから大丈夫!啓吾さんはもう家に着いた?』
「いや、今改札を抜けたとこ。これからそっちに向かって歩くよ」
『──ほんと!?じゃあ、外で待っとく!』
「え、いいよ?外は寒いでしょ?」
『ううん、大丈夫だよ!啓吾さんに会えるんだったら、寒いの何てへーキ!』
「………そんなかわいいこと言われると、攫って帰りたくなるんだけど……」
『え?何?声が小さくて聞こえないけど?』
「あー……何でもない。ついでにケーキも受け取って帰ろうかな?」
『啓吾さんが持って帰るの?大丈夫?荷物重くない?』
「ケーキくらい平気だよ。悠希が注文してくれたんだから、運ぶのくらい俺にさせてよ」
『分かった。じゃあ、受け取ってから外に出てくるね!先についてたら、ちょっと待っててね!』
そう言うと悠希は電話を切った。
最後に聞こえた声が本当に嬉しそうで、はずんでいて……コンビニに向かう俺の足どりも、何だか速くなっていた。
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