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第2話

俺のグラスが空になっていることに気づくと、すぐに葵君はビールをつぎ足してくれた。 「悠希君、年末年始も帰省していたのに、また今週も帰ってるんですね。成人式は今日だったんですよね?」 「ええ。式は午後からで、夜は同窓会に出るって……今頃友達と飲んでいるだろうね」 「成人式、帰省している間にあったらよかったですね」 「俺のときは3日にあったぞ。うちは田舎だからな。葵んときは高瀬君と同じで、成人の日の前日の日曜日だったな」 「悠希の地元はそこそこ大きな街だからな。帰省に合わせなくても十分人が集まるんだろうな…」 「悠希君のスーツ姿、見たかったなー。長谷川さんは見たことあります?」 「出発する前に着て見せてくれたよ。大学の入学式のときにお父さんが用意してくれたんだって」 「……スーツに着られてそうだな」 「そこがかわいいんだって!誰だって最初は着慣れないもんだろ。葵君も成人式のときはかわいかったんじゃない?お前、見せてもらえなかったの?」 「え?……いや、成人式の後、うちに寄って帰ったから」 「………そ、そう……だった、ねー…」 「……ふーん。で?その感じだと、何だかその後、楽しいことがオマケでついてきたみたいだなー?」 「えっ……なっ、なんのことか、よく分かんねーなっ!葵!」 「うっ、うん!」 田中は空々しい返しをし、葵君は葵君で顔を真っ赤にして、横に置いていたお盆でぱたぱたと扇ぎ始めた。 ……こいつら、成人式の後、イタしたな。どうせ葵君のスーツ姿に萌えたんだろ、田中めっ。その展開、うらやましいぞ! そんなどうでもいいことを話していたら、俺の携帯電話の着信音が鳴った。と、ほぼ同時に、葵君の携帯も鳴った。 「あ、悠希君からメール!」 俺が持ってきたバッグから携帯を取り出している間に、ポケットに入れていたらしい葵君が先にメールを見た。 「ほらっ、ちょうどいいタイミングで、悠希君がスーツ姿の画像を送ってくれてるよ」 葵君が隣に座っている田中に画面を見せている間に、俺も自分の携帯を手にとる。どれどれ…どんな画像だ…? 画面を操作して、メールを開いて……そのまま、バッグを掴むと立ち上がった。 「長谷川?」 「長谷川さん?」 「─────帰る」 「「……え?」」 きょとんとする二人を置いて玄関に向かうと、急いで靴をはきドアを開ける。 「田中!葵君!今日はありがと!このあとは邪魔しないから、存分にイチャイチャしてくれ!」 「「ええ!?」」 葵君が驚きの声と、田中が怒りの声とを上げるのを聞きながらドアを閉めると、駅に向かって急ぎめで歩き出した。

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