72 / 105

ひなたぼっこ、る ?第1話

朝目が覚めたら、部屋の中に違和感があった。 何だろう……何が気になるんだろう…… わからないまま朝食を食べ、片付けを手伝い、リビングに戻って改めて部屋を見渡すと、ようやく気づいた。 新しいラグとクッションが置かれているんだ。 ……僕のひなたぼっこの特等席に。 「──悠希、お湯が沸いたから温かいものでも飲もう」 キッチンから、啓吾さんの声。 「……………はーい」 一度もってしまった違和感のせいかな……なんとなくすっきりしないまま、返事をしてキッチンに戻った…… あのあと一緒にお茶を飲んで……買い出しをかねた散歩に出かけて……昼食を食べて…… ずっと二人で過ごしたのに、部屋に増えたものの話はひとつも出てこなかった。 そうなると、こちらもたずねるタイミングを見失ってしまって…… いつもならひなたぼっこをしている時間だけど、どうしたらいいのか分からなくて……とりあえず、ラグの横に座った。 ……これって、どういう意味だろう。 毛足が長くて優しい緑色をした丸い形のラグの上に、これまた丸い形のもこもこした黄色のクッション。 昨日まではなかったはずなのに、僕の特等席を横取りしてる。 ここは、この家の中で唯一「僕の場所!」と言いきれる、お気に入りの場所なんだ。 いつだってここでのんびりして……お日様の光を浴びながら、窓越しに澄んだ空を見るのが大好きで。 啓吾さんだって、それは知っているはずなんだけど…… ということは、これは僕に使えということなのかな? でもそれなら、啓吾さんの口からそんな話がでてもいいよね。今まで一緒にいたんだから…… でも、何にも言われなかった。 じゃあ、僕のためのものじゃあ、ないのかな。 だとすると、啓吾さん用? でも、今まで一緒に過ごしてきたけど……床でゴロゴロしているところなんて、見たことないよ。 しないことのために、わざわざ買うかなぁ。 じゃあ…… じゃあ、これは誰のためのもの……? 途端に胸が苦しくなって、急速に血の気が引いていくのが分かった。 こんなに日が当たるところにいるのに、ぞくっと体が震えて、思わず自分で自分を抱きしめてしまう。 二人だけだと思ってた空間に、突然誰かが割り込んできたような気がして、怖い。 この部屋を訪れて……一緒に過ごすような人が、他にもいるのかな…… どんな答えよりも一番怖い考えにたどり着いてしまったせいか、目の前の景色がじわじわと歪みはじめてしまった……

ともだちにシェアしよう!